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同窓会との連携の目的

2015年3月4日
河野委員長の写真

同窓会との連携の目的

慶應義塾大学大学院経営管理研究科 委員長
慶應義塾大学ビジネス・スクール 校長
河野 宏和

2009年にKBSの委員長・校長に就任して以来、私は同窓会との連携強化を一つの重要な施策と考え、そのためのタスクチームを作って活動してきました。 M12期の日高会長、M13期の高尾会長、M14期の清水会長の頃からできるだけ幹事会や役員会に出席し、私の考えを直接、役員や幹事の皆さんに伝えるよう努めてきました。 M15期の安部会長の年には創立50年のイベントを迎え、同窓会との共催という形で未来志向のシンポジウムを開催しました。 続くM16期の眞田会長、M17期の柴田会長と、いずれも同窓会とKBSの連携強化に積極的に対応して頂き、KBSとの絆や一体化をスローガンに、新作ケースの討議やビジネスプランへのコメントを中心としたホームカミングデーを実施してきました。
従来の活動を見直しながら同窓会とKBSの連携を強化していくことは、KBSならびに同窓会を活性化していく一つの確実な方策です。 しかし、連携や交流だけを繰り返しても、様々なイベントいった手段の側に関心が向きがちとなり、やがてはネットワーク重視という名目の下での飲み会が増え、多くの会員にとって有益な連携を深めていくことは難しくなっていくと感じています。 そこで、同窓会役員が交代するこのタイミングに、同窓会とKBSの連携の目的を再考し整理しておきたいと考えました。

KBSは、そのミッションを以下のように定めています。

KBSは新たな構想を作り実現するリーダーを育成する。
そのために、多様な学生がともに学ぶ喜びを知り、世界一線級の研究を発信し、
実務経験と体系的知識を融合する場を提供する。

すなわち、KBSは自らの活動領域を、1行目が示す「教育」、2行目が意味する「研究」、3行目が言及する「交流」という3つに定め、それぞれを強化していくことを宣言しています。したがって、同窓会との連携も、このミッションステートメントが示す「教育」「研究」「交流」という3つの領域で深められてこそ、意味を持つことになると考えます。

まず「教育」です。端的には、同窓生が現役学生に経験や知見を伝えて行く場面がもっと多くても良いでしょう。
卒業後に実務で苦労した経験を基にOB・OGがシリーズで講演する「経営実務講座」、同窓会役員が下田での新入生合宿の最終日に新入生に語りかける特別講演に加え、OB・OGの知見を教育の場面にもっと活用していけないでしょうか?
グローバル社会の地域特性、アントレプレナーの課題、M&Aの裏事情など、同窓生は、教員が語るよりも迫力ある話題に日々直面した経験を有しているように感じます。もちろん、教育活動の責任は教員にありますが、より多くの同窓生の経験や知見を、授業内講演で伝えてもらったり、定期的に特別講演会を開いていくなど、もう少し有機的に連携していけないものでしょうか。今年からスタートするEMBAプログラムでも、同窓生が活躍する企業は、国内フィールドにおいて貴重な教育実践の場になると期待しています。

次に「研究」です。一見すると研究は教員の仕事と考えられがちですが、企業や業界が直面している課題を教員と共に考え、問題の構造を分析したり解決策を考えるような研究は、ビジネススクールが最も得意とするタイプの研究でしょう。もちろん、研究サポート体制の整備といった課題は残されていますが、ビジネススクールは、産学が連携した研究活動のロールモデルを世に示す役割を果たしていくべきです。その出発点は、既に多くのケース教材が、OB・OGの協力の下に作成されているという事実でしょう。それをもう少しシステマティックに進めるだけで、教育ともシナジーを生むような、ビジネススクールならではの学際的かつ業界横断的な研究活動が実現できると考えます。KBSはCKJ(China, Korea, Japan)ワークショップやCoBS(Council on Business and Society)フォーラムといった国際レベルでの研究活動にも注力していますが、同窓会と連携した研究も大きな成果に結びつく宝の山と言えるでしょう。

こうして「教育」と「研究」の連携に取り組むことが日常の活動として定着すると、そのための場や成果発表の機会として、「交流」は自然と進んでいくことになります。もちろん、こうした理想論だけでなく、昨年のようなビジネスプランコンテスト、若年学生向けのインターンシップの機会提供、学年をまたがった同窓生の連携強化、就職支援面でのサポートなど、交流に関係する具体的な課題は、To Doリストとして目の前にあります。加えて、同窓会役員は1年ごとの持ち回りで、本務を有するみなさんのボランティアで成立しています。KBS側のサポートやコミットメントを棚上げしては、連携が前進しにくいことも事実です。しかし、今一度KBSのミッションステートメントに立ち戻り、同窓会とKBSの連携が目指す姿をもう一度考える作業が、回り道のように見えても、将来の連携を実効あるものとするために、極めて重要かつ不可欠であるように思えてならないのです。例えば、役員会や幹事会の場面で、教育面や研究面での連携をテーマにアイデア出ししてみるなど、会員の意見を反映しながら検討していける仕組みを具体的に考えていきたいと思っています。役員だけでなく、会員の皆さんからのサポートを宜しくお願いいたします。